設立趣意書
我が国の経済成長を維持する原動力の中心となっているのは、情報処理システムとしてのコンピュータの方式、機能、構造とその応用に関する科学、いわゆる情報科学であります。このために情報科学の研究は、我が国の経済を支える基幹として強く求められ、大学、政府、民間において積極的に推進されておりますが、一方で情報科学は、一国での研究が他国での応用開発につながるなど国際交流を媒体として急速な進歩を遂げてきたことは周知の事実であります。
しかしながら、近年国家間の貿易摩擦が激化の一途をたどり、その結果各国は国家的基幹産業の中心的存在である先端科学技術の保護と国外流出防止若しくは制限に力を入れはじめました。これは、人類の共通財としての先端科学の健全な発展上危機ともいうべき状況であり、国際交流の阻害によって今後の先端科学の発展の停滞が危惧されるところであります。情報科学の分野においても、単に応用開発のための科学技術の進展ばかりでなく、基礎的な学術研究の発展にとりましても国際交流の阻害は大きな支障となるものと考えられます。
このたび、このような状況の緩和を図るために、「財団法人 情報科学国際交流財団」を設立し、我が国が国際社会における先導的立場に立って情報科学に関する基礎的な学術研究の国際交流を推進しようとするものであります。
日本で開催された情報科学に関する国際研究集会の開催数は諸外国に比較して極めて少ないことや国際研究集会への国外からの論文提出率が必ずしも高くないこと等の現状にかんがみ、情報科学の基礎的な学術研究に関する論文の発表や討論のための国際研究集会の開催を奨励すると共に若手を中心とする情報科学の研究者の他国で開催される国際研究集会への参加、他国の研究機関の現状調査及び国際的共同研究への参加等を奨励し、情報科学に関する基礎的な学術研究の国際交流活性化を推進しようとするものであります。さらに、情報科学に関する情報・資料の収集を行い、機関誌その他の出版物によって関係研究者等に対し情報を提供し、情報科学の研究の円滑な進展に貢献しようとするものであります。本財団は以上のような趣旨のもとに情報科学に関する基礎的学術研究の国際交流の奨励において重大な役割を果たすことを目標とし、ひいては学術の国際交流の進展に寄与しようとするものであります。
昭和 62 年 3 月 31日